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消防の教科書~消火活動の10原則【前編】~

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消防の教科書~消火活動の10原則【前編】~

 

 

前回の記事はこちら⇩⇩

 

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こんにちは、健二です。

 

前回は火災における消防力ということで『消防力』という言葉の意味について紹介をしました。

 

今回は消火活動の10原則ということで、火災現場に現場到着してから消防隊として行わなくてはならない原則事項を解説とともに紹介していきたいと思います。

 

 

 

 

 

①最先着消防隊は直近水利部署を原則とする。

 

 

まず、1つ目は「最先着消防隊は直近水利部署を原則とする」です。

 

※水利部署...消防車のポンプに吸水するための水利に就くこと

 

火災現場に1番初めに到着した消防隊がしなくてはならないのは「素早いホース延長と放水」です。

水槽付きの消防ポンプ自動車では基本的に1500L以上の水積載しているので、もし水利に就いていなかったとしても水を出すことは可能ですが放水ができる時間は3~5分と考えて良いでしょう。

 

その3分の間に他の隊が現場到着⇒水利部署⇒揚水(水をポンプに吸い揚げること)⇒中継ホース延長⇒中継⇒送水の流れができれば良いのですが、火災の発生場所や他隊の出動状況によってはそれが物理的に不可能な場合があります。

 

火災中期以降だと消防隊1隊のみですと圧倒的に消防力が劣勢のため活動方針としては他の建物等への延焼阻止になるとは思いますが、火災初期であっても水利部署をしていないと途中で放水ができなくなってしまうリスクがあり、進入隊員に危険が及ぶため屋内進入をさせることができません。

 

そのため先着消防隊は火災現場の直近の水利に部署して自隊だけである程度の放水時間を維持できるようにしておかなくてはなりません。

※水利が火災現場に極端に近い場合は火の煽りを考慮しましょう。

※同じ署所から水槽付きのポンプ車とポンプ車などのペアで出動する場合はこの限りではありません(③で紹介します)。

 

 

②後着隊は包囲体系を考えて車両部署をする。

 

 

2つ目は「後着隊は包囲体系を考えて車両部署をする」です。

 

一般的に先着隊とは現場に3番目までに到着した隊を示し、後着隊はそれ以降到着した隊のことをいいます。

 

先着隊は風向きや延焼危険を考慮した場所に部署をしますが、現場到着までの時間があって先着隊の部署位置・活動状況がある程度把握できる後着隊は包囲体系をとるための部署をするのがセオリーとなっています。

 

包囲体系とは出火建物の四方を包囲して他の建物への延焼阻止を図る消防戦術の一つです。

火災初期や中期、最盛期であれ隊が集結すれば基本的にこの体系をとります。

 

なぜ車両の部署位置を考慮しなくてはならないかというと、延焼中ではホースを伸ばしながらの包囲は難しいためです。

延焼している建物の間を通っていくのは落下物や建物の倒壊リスクもあるため非常に危険なため、車両の部署位置を考えて容易に包囲体系をとれるようにしておきましょう。

 

※先着隊が水利に就いていないor防火水槽に部署している場合は水の中継が優先です。出動途上に無線交信をして先着隊の活動状況を把握しておきましょう!

 

 

③タンク隊(水槽付き)が建物に直近出来る場合は、早期注水防御を図るために積極的にペア作戦をとる。

 

3つ目は「タンク隊が建物に直近出来る場合は、早期注水防御を図るために積極的にペア作戦をとる」です。

 

①でも触れましたが水槽付き消防ポンプ自動車は水利部署をしなくても放水ができるというメリットがあります。

 

水利部署をしてから放水までの消防ポンプの機操作は早い機関員であれば1分以内にできるともいいますが、その1分で他の建物に延焼してしまうことがあるかもしれません。

ペア作戦が可能な時は狭隘地区などで水槽付き消防ポンプ自動車が火点直近出来ない場合を除き積極的に「水槽付き⇒火点直近」「他のポンプ⇒水利部署・中継送水」の体系をとりましょう。

 

 

④延焼火災で早期注水の時期を過ぎたと判断できる場合は後着隊も水利部署をする。

 

 

4つ目は「延焼火災で早期注水の時期を過ぎたと判断できる場合は後着隊も水利部署をする」です。

 

火災現場で後着隊は火点の近くに部署できないの時などにその車両のポンプを使わずに隊員が他隊の車両を使って活動する場合があります(車両を捨てるともいわれています)。

しかし、火点から他の建物へ延焼した延焼火災の場合、火勢が拡大し延焼速度はさらに速くなっていきます。

そのためさらなる延焼阻止をするためにはより多くの放水量を確保する必要があるためより多くの水利部署をしたポンプ車が必要になります。

 

延焼火災は放水量が重要になります。延焼が想定できる場合は水利が火点から遠くても水利部署をすることを頭に入れておきましょう。

 

 

⑤車両部署位置は鎮火までの消防活動を考える。

 

 

5つ目は「車両部署位置は鎮火までの消防活動を考える」です。

 

火災に限らず災害時は、ただ闇雲に現場の近くに車両を部署させればいいという考えではいけません

 

火災ではホースカーの通行場所を確保しておかないと他隊からの中継を妨げてしまうかもしれませんし、現場付近に車両が何台も停まっていては活動スペースも狭くなってしまい効率的な消防活動をすることができなくなってしまうことがあります。

 

また、火災によって発生した負傷者を救急搬送する場合があるので救急車の搬送経路は絶対にふさがないようにしましょう。車両の部署位置ひとつで救える命が救えなくなってしまうかもしれません。

 

そのため機関員一人で車両部署位置を決めるのではなく隊員や隊長と意見を交換してベストな部署位置を見つけましょう。