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NBC災害等の特殊災害と特性について

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NBC災害をはじめとした代表的な特殊災害と特性について

 

 

こんにちは、毎晩お風呂で除染活動訓練をしている健二です。

 

 

今回は近年全世界で多発しており、日本でも東京オリンピックの開催される2020年に向けて対策をしている「特殊災害」についてお話していきたいと思います。

 

 

 

早速ですが皆さんは「特殊災害」とは何だと思いますか?

 

 

 

真っ先に思いつくのがサリンなどの化学物質に起因する災害「化学(C)災害」や放射線、放射能等の「核物質等(N)の災害」だと思います。

 

 

それ以外にも沢山あるのですが意外と勉強したり、実際に事案をニュース等で見たりしないと特殊災害にはどのようなものがあるのかというのがわからないと思います。

 

 

そんな方のために今回は「代表的な特殊災害の分類」と「各特殊災害の特性」について書いていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

目次

 

 

 

特殊災害の定義と代表的な分類

 

 

 

特殊災害の定義

 

特殊災害とはその言葉の通り通常災害ではない「特殊」な災害のことなのですが。消防の間では

 

伝統的消防の戦術では効果的な対応が困難な事象を「特殊災害」と定義していることが多いです。

 

ちなみにここでは「伝統的消防の戦術」とは主に火災に対する放水と破壊を中心とする活動を言っています。

 

 

 

特殊災害の分類

 

 

 

一括りで特殊災害といえど特殊災害には様々な種類があります。

そこで代表的な特殊災害の分類をここで紹介していきたいと思います。

 

 

⑴特殊な物質に係る災害 

 

 

「特殊な物質に係る災害」とは消防法の危険物のほか、使用される物質の毒性の強さなどから多数の負傷者が発生する可能性が高く、活動にあたる消防隊員への二次災害の危険性が高い物質が起因で発生する災害をいいます。

 

代表的なものとして

 

・危険物(危険性物質)の火災、漏洩

・ガスの火災、漏洩

・火薬類の火災

・放射性物質(N)に係る災害

・生物(B)に係る災害

・化学(C)に係る災害

 

などがあげられます。

 

 

 

⑵ 特殊な施設・設備等に係る災害

 

施設・設備等が複雑、大規模又は個別性が強いため災害に対応するためには専門的な知識が必要でしょう。

 

 

代表的なものは

 

・電気設備の火災

・車両火災(危険物品積載車、地下鉄火災、トンネル内火災)

・船舶火災

・航空機火災

・トンネル等火災

 

 

 

⑶特殊空間(環境)に係る災害

 

特殊な空間や環境下で発生する災害です。

工事現場などの実態把握をしておくことが重要になるでしょう。

 

代表的なものは

 

・圧気工事現場における災害

・酸素欠乏現象における災害

 

 

また、このような現場で活動する際に役立つ知識として「酸素欠乏危険作業主任者」という国家資格があります。

 

 

酸素欠乏危険作業主任者技能講習か酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を受講することによって取得できます。

 

 

講習では酸素欠乏によっておこる体の異変や酸素濃度の測定方法などを学べるそうです。

 

 

 

 

 

⑷テロに係る災害

 

テロ災害とは、言葉の通りテロリストが行うテロ行為に起因する災害です。

 

代表的なものとして

 

・爆破テロ

・放火テロ

・自爆テロ

・核物質等(N)テロ

・生物(B)テロ

・化学(C)テロ

 

 

 などがあげられます。

 

 

2020年の東京オリンピックを標準にテロ災害に対応すべく東京消防庁をはじめとして各自治体でテロを想定とした訓練が多く行われています。

 

 

 

 

特殊災害の特性

 

⑴特殊な物質に係る災害の特性

 

一般に火災に対して消防隊は延焼防止のために風下に部署して迎え撃つ体制を整えるのですが、これに対し特殊な物質に係る災害においては消防隊の部署位置は風上または風横とし 原因物質の影響を受けないように進入する必要があります。

 

 

このため、これらの災害においては当該災害の原因物質を特定することが消防活動の方法を決定する大前提です。

 

 

また、特殊な物質に係る災害の際に着装する 防護服は重量や取り扱いの面で少し難あります。この点も消防活動に対する障害の一つとなります。

 

 

 

 

 ・放射性物質(N)災害の特性

 

放射性物質(N) 災害とは、一般的に原子力施設や放射性同位元素等取扱施設、核燃料物質及び放射性同位元素等の輸送に対する事故及びテロ災害などが考えられます。

 

 

放射性物質(N)災害の現場では、放射性物質による汚染(放射性物質が身体、資機材に付着すること)や放射線の被曝(体が放射線にさらされること)のおそれがあります。

 

 

特に放射性物質又は放射線の存在は五感で感じることができません。被爆の程度を自ら判断するには、放射線測定設備、機器が必要であり、また、放射性物質による汚染、または放射線被ばくの危険性がある場所では、放射線防護用器具の整備が必要になるなどの特殊性を有しています。

 

 

 

・生物(B)災害の特性

 

生物剤(B)に起因する災害であり意図的に起こされたもの(アメリカ 炭そ菌テロ等)及び事故(実験室や病院内から外部への漏えい等)があります。

 

 

特にテロに用いられる可能性のある生物剤の中には、炭疽菌のように感染症として指定されている病気の原因となるものも多く含まれており、生物剤を暴露した場合にはその潜伏期間を経た後に初めて症状が現れる可能性があります。

 

 

そのため生物(B)テロ災害の場合、消防活動の開始時期が他の災害と比較して大幅に遅くなる可能性があるのも特性です。

 

 

 

・化学(C)災害の特性

 

化学剤に起因する災害であり、意図的に起こされたもの(松本サリン事件、地下鉄サリン事件等)及び事故(化学工場火災、輸送中の事故等)があります。

 

化学(C)災害時の消防活動は、風上または風横の安全な側から進入し、化学剤の影響を受けない位置に部署することや防衛のための装備を着装する必要があります。

 

基本的には化学(C)テロ災害であっても毒・劇物施設や輸送車両に起因する化学災害時の消防活動に準じますが、化学(C)テロ災害時には化学剤特有の強い毒性、多数傷病者の発生、物質特定の困難性などから非常に困難な消防活動になります。通常の科学災害よりも高い知識と判断力並びに統制が求められるでしょう。

 

 

 

 

⑵特殊施設等に係る災害の特性

 

 

特殊施設等における災害では災害実態への接近が困難な場合が多いです。

 

ルート選定はトンネル 、洞道、船舶などの災害において重要となりますが、活動時間が長期に及ぶものと想定されますので、進入、援護などのローテーションも考慮して部署することが必要になります。

 

それぞれの施設等に応じた消防設備・施設等を活用して災害対応することが求められるので 設備・施設の活用方法の勉強しておきましょう。

 

 

 

 

⑶特殊空間(環境)に係る災害の特性

基本的に進入するのに危険を伴います。

酸素欠乏現場における災害では、酸素が欠乏しているかどうか匂いや色などでは全く判別することができないため、事故原因頭が判明しないうちに酸素欠乏場所に侵入することは極めて危険です。

 

 

事故発生状況の情報収集や指揮活動に基づいた酸素濃度等の測定、危険区域の設定及び進入隊員の空気呼吸器の完全着装と安全管理の徹底を図りながら要求所者の救命効果を高める活動を行う必要があります。

 

 

 

⑷テロ災害の特性

米国連邦捜査局(FBI)は、テロ行為を「政治的または社会的な目的を達成するために、政府民間人またはその一部に対して脅威を与え、または威圧することを企画して人間または財産に対して非合法的な形で武力を行使すること。」と定義付けしています。

 

日本ではテロ行為が発生した際は自衛隊が対応することになると思いますが、事案がテロ行為であるか否かは、最初に対応する者にとっては差異を生じるものではないため、原因にかかわらず消防機関が現場の第一対応者になることには変わりはないため対応するための想定訓練等が必要でしょう。

 

 

 

 

まとめ

 

 

今回はNBC災害をはじめとした特殊災害の分類と特性についてお話していきました。

 

 

今後文明の発達により特殊災害が増加すること予測されます。

幅広く知識を身に着けて災害に対応できる隊、隊員を育てていくことが重要になるでしょう。