消防の教科書~放水器具と注水について(後半)~
消防の教科書~放水器具と注水について(後半)~
みなさんこんにちは、健二です。
前回の~放水器具と注水について(前半)~では消火活動で主に使用する放水器具の紹介をしました。
今回はその後半ということで、火災等でのの注水に関する注意点や注水の種類について紹介していきたいと思います。
筒先は絶対に離すな!【放水活動をする上での心得】
消防職員にとって筒先は体の一部だ!
まず初めに、放水活動(注水)をする上での注意点をいくつか紹介していきたいと思います。
採用試験に合格して消防職員となったらほとんどの場合放水訓練を早い段階で行うと思います。
新人なので覚えることはもちろん沢山ありますが、数多く言っても覚えられないので多くを語らない先輩職員もいるかもしれません。
しかし、どんな先輩職員でも放水訓練時に新人に必ず言うことがあります。
それは、
「絶対に(筒先を)離すなよ!」
です(フリじゃありません(笑))。
消火活動で行う放水はポンプを使用して水に圧力をかけて出しているためかなり強い勢いがあります。
上の動画を見ていただくとわかると思いますが筒先を離すとホースの先端部分が大きく暴れます。(ちなみに後半から上にも水が出ているのはホースがバーストしてその穴から水が出ているものです)
筒先は金属などでできているのでこれが人や物に当たってしまうと負傷者や物損被害を起こす要因になります。
なので二次災害を起こさないためにも放水活動で一番大切なのは筒先を離さない事なのです。
活動やその他の注意点
筒先を離してはいけないということは先ほどの説明でお分かりいただけたと思いますが、そのほかにも事故防止のために注意しなければならないことがあります。
まずは準備の段階で、「自分が使うノズルの性能を理解すること」と「ノズル(シャットオフレバー)の手入れ」はしておきましょう。
後述で説明しますが放水活動では基本的にストレート(棒状)注水と噴霧注水を使用します。
ストレート注水は勢いが強いためその分反動も大きくなります。
ノズルの種類によってはそのストレートから放水が始まるものがあるため、放水を開始する際に自分で注意意識ができるように性能を理解しておきましょう。
その反動を訓練で覚えておくことも重要ですね。
また、ノズルのシャットオフレバー(操作レバー)の手入れもしっかりしておきましょう。
いざ火災現場でノズルが開かずに放水ができないというような事態が発生してしまったら重大事故につながる恐れがあります。
ノズルに限った話ではないですが資機材の手入れはしっかりとしておきましょう!
火災現場で使用する代表的な注水の種類
次に火災現場で使用する代表的な注水の種類のうちストレート(棒状)注水と噴霧(フォグ)注水の2種類を紹介したいと思います。
ストレート(棒状)注水
ストレート注水は棒状で力強く飛距離のある放水ができます。
よって、燃焼実態に近づけない場合や(ガラス等の)破壊を伴う消火活動をしたい場合に選択します。
注意点として
・反動力が大きいため強固な足場を確保して反動を受けにくい姿勢で放水する
・屋外から屋内に注水する場合は天井や壁に充てて反射注水する
などが挙げられます。
1つ目は水の勢いなどに負けて転倒をしたりして誤って筒先を離さないためにしっかりとした足場で活動しましょうということですね。
これは足場が土だったりすると放水によって出た水によってぬかるんでくることもあるので注意してください。
2つ目はしっかりと燃焼実態に放水を届けましょうということです。
ただ闇雲に火災が発生している室内に放水をするのではなく、効果的な消火活動をするために建物内の天井や壁などで放水を反射させて燃焼実態にしっかりと注水できるようにしましょう!
また、ストレート注水は以下のようなノズルで放水することができます。
噴霧ノズル・ダブルコントロールノズル・ガンタイプノズルはストレート注水と噴霧注水の切り替えができ、スムースノズルはストレート注水のみができるノズルとなっています。
風力と風向によって大きく左右されますが、スムースノズルは棒状で注水した際に水がほうき状にばらけるまでの距離が長いため遠距離からの注水に適しています。
また、上記のように棒状の状態を維持して放水できる距離のことを有効射程距離といいます。(下のグラフはノズルの口径が23㎜だった時の有効射程距離の目安です)
しかし、スムースノズルは筒先での放水の停止ができないので使い勝手がほかのノズルと比較してかなり悪いというデメリットもあります。
噴霧(フォグ)注水
噴霧注水とは文字通り霧状の注水となります。
噴霧注水は噴霧ノズル・ダブルコントロールノズル・ガンタイプノズルではストレート注水もできることから用途に合わせて注水の放射角度(開度)を変更することができます。
・攻撃を目的としたストレート注水に近い開度 約10°
・攻撃と防御を目的とした開度 約30°
・防御を目的とした角度 約120°
・噴霧よりもさらに微粒子化したものをフォグ
として区別されています。
実際噴霧注水は棒状注水よりも冷却効果が高いため消火効率がよく、自己防衛や進入隊員に対する援護注水もできるため棒状注水よりも使用する頻度は高いかもしれません。
しかし、噴霧注水は開度が広くなるほど射程距離が短くなるため消火活動を目的とするには燃焼実態に近づかなければならないというデメリットもあります。
主に火災終期での残火処理での使用となりますが、噴霧(フォグ)注水に特化したフォグガンと呼ばれる筒先もあります。
代表的な注水といいましたがこの2つの注水で基本的に9割の火災は防ぎょできるのでまずはこの2つの注水の特徴を覚えておけば困ることは少ないでしょう!